IR活用方法について – キャビネットIR

キャビネットIR の重要性

キャビネットIR データはマルチエフェクターやアンプシミュレーター、またはコンピュータを用いたDAWなどで使用することで、ギターアンプをスピーカーキャビネットで出力し、マイクで録音されたサウンドを仮想的に再現することができます。具体的なIRデーターの活用について触れる前に、エレキギターの信号がどのような流れでキャビネットから出力されるかについて知ることが大事です。

エレキギターの音がアウトプットされるまで

エレキギターは弦の振動をマグネットとコイルを使用したピックアップ(PU)の電磁誘導で電気信号が発生します。この電気信号は非常に微弱で、またハイ・インピーダンス信号のためスピーカーをそのまま駆動することはできません。そこで必要となるのがギターアンプです。コンボアンプやアンプヘッド等のギターアンプのプリアンプで、ピックアップで発生した微弱な電気信号のレベルを持ち上げることで電圧の増幅を行います。プリアンプで電気信号として十分なレベルにはなりますが、ギターアンプで用いられる8オームや16オームの極めてローインピーダンスであるスピーカーを駆動する電力がありません。そこでパワーアンプで電力増幅を行なうことにより始めてスピーカーユニットを鳴らすことができる電気信号になります。

ギターアンプは真空管を用いたものが主流ではありますが、トランジスタやFET、またはICを使用したアンプであっても基本的な考え方や回路構成は同じです。近年多くのギターリストが使用している、デジタル技術を用いたアンプシミュレーターはアナログのギターアンプの回路をモデリングすることで実際のギターアンプに近いサウンドを再現しています。アナログは実際のアンプヘッドやキャビネット、そして録音マイク、それぞれが音の極めて重要な要素でとなっていますが、デジタルシミュレーターはそれらをデジタルモデリングによって演算処理し音として再現しています。

アンプシミュレーターの信号の流れ

ここで実際にアンプシミュレーターの中で代表的な機種の信号ルーティングをご紹介します。まずFractal Audio社のAXE-FXシリーズですが左のINPUTから右のOUTPUTに信号が流れるルーティングとなっています。この間に自由にエフェクトブロックと言われるエフェクターやアンプ、キャビネットなどのブロックをアサインしデジタル上で仮想的に物理的なギターアンプとエフェクターの流れを組み上げていきます。AXE-FXはルーティングブロックが上下4段あることでエフェクトブロックをそれぞれ直列、または並列に配置することができ、DSPの許容範囲の中で複雑な信号の流れを仮想的に再現することができます。
キャビネットIR
次にHOTONE Ampero2のルーティングですがこちらもAXE-FXと大きな違いはありません。左のINPUTと右のOUTPUTの中にブロックを配置しルーティングの流れで音を作ります。AXE-FXほどではありませんが、エフェクトブロックの数も必要十分な数とパラレルルーティングを組むこともできます。
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いずれの機種もギターアンプの音を再現するのに最小限必要となるブロックは「AMP」と「CAB」の2つです。「AMP」ブロックだけではスピーカーキャビネットから実際に音が出ているサウンドをモデリングしていないため、いわゆる「ライン臭い」と言われる非常に細い音しか出ません。「CAB」ブロックを経由することでギターアンプの音をスピーカーキャビネットで実際に鳴らしたような空気感と音圧のあるサウンドを得ることができるようになります。CABのブロックには機種にもよりますがメーカーが独自にサンプリングを行ったスピーカーキャビネットとマイクの組み合わせを選択することができます。このようにアンプシミュレーターを用いた場合も、実際のエレキギターとギターアンプそしてスピーカーへと、信号の流れは同じであることがわかるかと思います。

DYNAX IRの活用

DYNAX IRは一つのキャビネットモデルに18種類のマイクと、4つのマイクポジションを含めた78種類のStandard IRの他、DYNAXが独自にブレンドしたAdvanced IR 18種類。全96種類のデーターを提供しています。各製品に標準でインストールされている IRデーター に変えてDYNAX IRデーター を読み込むことで簡単にDYNAX IRの持つ圧倒的にレスポンスとリアリティーに優れた キャビネットIR サウンドをご使用頂くことができます。キャビネットIR はレコーディング・ライブ・配信など様々な用途でお使いいただくことができます。憧れの名機のキャビネットやマイクを用い、プロのレコーディングスタジオで録音したクオリティーのサウンドを容易に再現します。DYNAX IRはギターリストのクリエイティビティーを刺激することは間違いありません。

キャビネットIR アンプシミュレーターでの活用

DYNAX IRをアンプシミュレーターで使用する場合、機種によってCABのエフェクトブロックにロードする方法とIRデーターをロードすることを目的としたIRエフェクトブロックにロードする方法があります。DYNAX IRはスピーカーキャビネットに対し録音するマイクロフォンとマイクポジション毎にデーターを分けていますので、もしCABブロックを使用する際は機種に標準で備わっているMicを「None」等の、マイクシミュレーションを無しの状態で使用することを推奨します。またプロのレコーディングではダイナミックマイクとコンデンサーマイクなどの音響特性の異なるマイクでマルチトラックレコーディングを行うことが通常です。そして録音したトラックをバランス良くミックスし楽曲に合った音作りをしています。お使いのCABブロックにIRデーターを複数読み込みが可能な機種の場合は複数のIRをロードし、Mixバランスでより好みの音作りを行うことで同じ環境を再現します。もし、お使いのアンプシミュレーターが一つのIRのみしか使用できない場合のためにAdvanced IRを用意しています。Advanced IRはDYNAXでセッティングを行った複数のマイクで録音したサウンドをIRデーターとして提供しているためベストなバランスを簡単に手に入れることができます。
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キャビネットIR IRローダーでの活用

IRローダー は近年数多くのメーカーからリリースされる単体のキャビネットシミュレーションを目的としたハードウェアです。IRローダーには大きく分けると2種類あります。一つは実際のギターアンプのスピーカーアウトの信号をダミーロードでアッティネートを行いアンプを保護します。代表的な機種としてはFryette Power Load IRSuhr Reactive Load IRがあります。そしてLINEレベルに下げた信号をIRデーターを用いてキャビネットシミュレーションを行っています。シミュレートされた信号はオーディオインターフェイスなどに接続し実際のキャビネットを鳴らすことなくサイレントレコーディングを実現します。もう一つはコンパクトエフェクタータイプのIRローダーです。代表的な機種としてはMooer RaderStrymon IRIDIUMがあります。これらはギターアンプのスピーカーアウトの信号をアッティネートする機能は有していませんが、ラインアウトの信号やエフェクターペダルの信号にキャビネットシミュレーションを行うことができます。近年のチューブアンプに肉薄するエフェクターペダルの音を空気感のあるサウンドにシミュレートすることができます。IRローダーはUSB端子を備えており、PCなどに接続することで標準の キャビネットIR 以外の IRデーター を取り込み使用することができます。

 

キャビネットIR DAWソフトでの活用

コンピューターを用いたDAWソフトで キャビネットIR を使用する場合はConvolution Reverbプラグインを活用します。元来 IRデーターはConvolution Reverbと言われる実際のコンサートホール等の空間音場特性をソフトウェアでリバーブとして再現するためのインパルスレスポンスを捉えたデーターでした。その為Convolution Reverbに キャビネットIR データーを取り込むことでキャビネットシミュレーターとして活用することができます。Convolution Reverbは主要なDAWソフトに標準で提供されているものもあり、代表的なところではLogicのSpaceDesignerや、CubaseのREVerenceがあります。有償プラグインとしてはWAVESのIR-Lなどが知られています。これらプラグインに キャビネットIR データをロードしギターの録音されているトラックにプラグインをインサートすることで、キャビネットシミュレーションされたサウンドを得ることができます。ギタートラックはラインレコーディングされた音が望ましいですが、実際にキャビネットにマイクを立ててレコーディングしたトラックに改めてキャビネットシミュレーションをかけることにより、より空気感のあるリアルなサウンドに加工することも自在です。DAWを使用した場合はPCの処理能力が許す限り、同一のプラグインを使用することができるため、DYNAX IRの複数のキャビネットやマイクの異なるデーターをロードし、より楽曲に適したギターサウンドを作り込むことができます。

キャビネットIR Mix IR3での活用

Mix IR3Red Wirez社が提供する キャビネットIR に特化したIRローダー専用ソフトウェアです。Mac / Windowsの両方に対応しておりスタンドアローンとしても、またVST, AU (Audio Unit), AAX (Pro Tools)の主要なプラグインフォーマットにも対応するためDAWのプラグインとして使用することもできます。Mix IR3の特筆すべき点は複数の IRデーター をロードすることができることです。DYNAX IRの提供している様々なキャビネットやマイク・ポジションの異なるIRデーターの持つサウンドをとても簡単にバランスを取りミックスすることができます。また、好みのサウンドとなったセッティングを単一のIRデーターとして生成し、エクスポートすることも可能です。まさに宅録ギターリストの必須アイテムです。
MixIR

キャビネットIR を用いてのセッティング

アンプシミュレーター、またはDAWのプラグインとして キャビネットIR を用いる場合、実際のギターアンプやスピーカーキャビネットそしてエフェクターの接続順をイメージすることで出音に変化が生まれます。例えばスプリングリバーブを内蔵するコンボアンプをイメージすると、接続順はギター → プリアンプ → リバーブ → パワーアンプ → キャビネットIRです。この場合スピーカーの代替えとなる キャビネットIR の前にリバーブエフェクトが入るためリバーブの残響についてもIRが作用します。一方でレコーディング時にはノーエフェクトのドライな音で録ったギタートラックに、ミキシングでリバーブをかける場合があります。このルーティングですと キャビネットIR の後にリバーブが入るためIRにリバーブの残響成分が影響することはありません。IRを用いることで、セオリー通りのルーティング以外にも、今まで世のギタリストが誰も考えたことのないような接続を行うことも可能です。DYNAX IRの持つ可能性は無限大に広がっています。

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